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パン工場の生産性 1 弘中泰雅 ブランスリー July 2001 |
1.生産性がいかにパン企業の経営を左右するか パン製造業とはパンを製造する企業である。 製造業というからには除くことの出来ない行為がある、「もの作り」即ち生産するという行為である。 もの作りには「新製品を開発する」ことと、「その製品を効率よく生産する仕組みをつくる」側面がある。 「新製品を開発する」ことについては、どこかで売れる商品が無いか、多くのパンメーカーが耳をそばだて、目をこらし、その結果コピー商品が巷にあふれるくらい熱心である、それがパン業界現状であろう。 もうひとつのもの作り「製品を効率良く生産する仕組み作り」に関してはどうであろうか。 本連載ではこの「効率よくパンを生産する」ことに着目して考えていく。 ○リアルタイムの生産管理 生産の効率化を図る対象である三大管理特性は、品質(Quality)、コスト(Cost)、数量・時間(Delivery)である。 生産管理は広くはこれら三つの特性を対象とするが、狭義にはDeliveryを対象とする。 Deliveryを対象とする管理といっても、@戦略レベル(年単位の期間の事業そのもの管理)、A戦術レベル(月や週を単位とした生産計画)、B業務レベル(日、時間単位の実際の製造着手時間、順序の決定)があり、生産管理といっても数年を要するものから、リアルタイムで対応を要求される問題がある。 企業の競争力の観点において、Deliveryの重要性のキーワードは時間競争である。 時間競争とは、変化の大きなマーケットに対し、開発、製造、販売がいかにタイムリーに出来るかの競争である。 ○生産の効率化に取り組む方法 生産の効率化に取り組む方法としては、現状の条件の中で最適な方策を考える方法と条件そのものを革新する方法がある。 例えば製造のリードタイムは(段取時間+加工時間)はそのままにして、最適なスケジューリングをする事により、生産量(スループット)を増加し、作業完了時間(メイクスパン)を最小化する事は前者にあたり、ステータスクオと呼ばれる。 後者は段取作業の改善、自動化設備の導入、冶具の開発により作業・段取時間を短縮し生産量を増加させる、ブレークスルーである。 これに対し、日常的にPDCAサイクルを回しながら、製造条件などを変更し、生産性を向上するやり方がである。 即ち現実を観察し、問題を発見して対策を繰り返すことで、生産性を上げていく方法はジャストインタイム(JIT)に代表され、改善と呼ばれるわが国でうまれた概念である。 この概念は、KAIZENという言葉で世界に広がっている。 生産を取り巻く環境は常に変化にさらされているので、高額の設備投資によるブレークスルーを行なっても、時間と共に機能の低下をきたし、機能を維持する為には改善を行なうことは必須である。 ○リエンジニアリング 図1はステータスクオ、改善、ブレークスルーの関係を示す、これらは生産性の向上に必要な要素である。 狭義には、生産管理はステータスクオの取り組みであり、様々な数理的な問題解決が可能になっている。 したがってステータスクオが生産管理の中核をなすが、改善、ブレークスルーを忘れてはならない。 三つの視点により、問題に応じて対応をし、生産性を向上させなければならない。 |
○労働生産性 生産性が良いと言うことは、労働、設備、原材料が効率良く生産に利用されるということであり、労働生産性が良いということは、投入される労働力が効率良く生産に利用されるということである。 特にわが国は最も人件費の高い国であり、多くの産業が労賃の低い中国などの国々に工場を移すなどの現実がある点からも労働生産性の向上は極めて大切である。 現状パンは生鮮食品であり、消費地の近隣で生産されており、簡単に海外に脱出するわけには行かないので、この点からも労働生産性を高める必要がある。 ○パン企業と労働生産性との過大な関係 それでは労働生産性がいかに、パン企業の経営に決定的な要素になっているか、見てみよう。 表1は平成11年発行の「中小企業の原価指標」をもとに作成したパン製造業の製造原価指標である。 パン企業の10社のうち、健全企業と欠損企業に分けて、それぞれの製造原価を100とした時の内訳である。 即ち同じ出荷金額の場合、健全企業は直接労務費が26.5%であるにもかかわらず、欠損企業は40.3%に達しています。 平たく言えば消費者は工場出値100円のパンを買ったとき、健全企業のパンの場合人件費分として26.50円、欠損企業のパンを買った時は40.30円ほど支払っていることになるわけです。 そのことは自ずから材料費の差になって現われ、健全企業のパンは54.10円の材料が使用されているが、欠損企業のパンは43.40円の材料しか使用されていないわけです。 このことは欠損企業のパンは健全企業のパンに比べて、小さいか、安い(低品位の)原材料から作るられるしかないわけです。 これでは売れない訳です、売れなければますます経営を圧迫します。 欠損企業、利益の出ない企業は、労働生産性を上げて、労務費を削減するしか、健全企業に変わる道がないことは明らかです。 いかに労働生産性が大切であるかもう一度考えて見ましょう。 |
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