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パン工場の生産性 5 
    
               弘中泰雅
       
            ブランスリー Novenber 2001
5.スケジューリング
1. スケジューリング問題
生産管理の実務のなかで最も注意を払うのは日程管理で、日程計画によって製品の生産に関わる分業を統合することが出来る。この日程管理を行なうのがスケジューリングである。日配商品であるという特性によりパンの生産は従来小日程(各日)計画が重要であったが、ペストリーなどのリタ―ドを必要とする製品、成形冷凍製品、焼成後冷凍製品などの導入に生産に複数日かかることにより中日程計画についても必要になってきた。従来原材料の投入から製品の完成まで1日で完了してきたため、製パン企業には仕掛り在庫の概念があまり必要でなかったが、中日程のスケジュールが必要であるということは、成形冷凍生地などは典型的な中間製品であり、いわゆる仕掛り在庫が生じてきていることを示している。したがって製パン企業も中日程の生産管理をしなければならない状況になってきているのである。成形冷凍品は仕込から製品まで2〜3日かかるため、急な補充生産は出来ないので欠品を出さないように、いつのまにか冷凍生地の在庫は膨らんでいく、欠品には注意を払うが在庫に対しては無頓着である傾向にある、この実態に気付いている経営者は少ないのではないだろうか。冷凍生地の必要以上の在庫は、製品の品質を劣化させるだけでなく、不良在庫の山でもある。
パン工場の製造現場は生地仕込工程、発酵工程、成形工程、焼成工程、仕上げ工程などで構成されている。パンの製法(どのような工程順で作るか)はパンの種類による特性や、生産条件などによりいくつかのうちから選んで用いられる。一般的には生産数が変動しても、パンの種類ごとに製法はあらかじめ決められている。
各工程における作業に必要な時間はそれぞれのパンの種類によってことなり、生産数によって時間変動する工程と一定の工程がある。どのような順番でパンを生産するかによって、作業全体の終了時間や仕事の流れ具合など、その日の生産状況は大きく変わる。予定された仕事(注文によるパンの生産)を決められた制約条件(製造条件、製品仕様、出荷時間など)を守って、工程に流す順序などを資源(生産設備、人員など)に割り当てて計画することをスケジューリングと言う。
2. スケジューリングの分類
スケジューリングの問題は生産だけではなく、毎日の仕事のスケジューリング、列車の運行ダイヤ、配送スケジューリングなどがある。スケジュ―リングの分類については図1にかかげた。 (図1)
一つの物的システムで生産が予定されている製品やジョブ(仕事)の加工順序にしたがって生産設備を配列し、それを用いて加工対象物を生産する場合の物的システムの構成をフローショップと呼ぶ、このような生産設備で加工時間を考慮して投入順序を決定することをフローショップスケジューリングという。パン工場において代表的なものとしては食パン専用ラインのスケジューリングがある。
加工対象物によって加工順序が異なる場合、フローショップのような生産設備の配列は用いられない。加工対象物はそれぞれの加工順序にしたがって生産設備に搬送され、加工が行なわれる。この場合、生産設備ごとに生産の順序を決定する必要があり、ジョブショップスケジューリングと呼ばれ、フローショップに比べて複雑になる。典型的なジョブショップとしては工作機械メーカーの機械加工工場があるが、食パン、ペストリー、ケーキなど雑多な商品をつくるリテールベーカリーの汎用生産工場はこれに近い。
日程計画の計算には、原材料の投入から完成品まで、順次生産の流れに従い工程作業の完了日程(時間)を計算していくフォワードスケジューリング法と、生産の流れに逆行して、完成品の納期から順次工程をさかのぼりながら作業の着手日程(時間)を計算していくバックワードスケジューリングがある。前者は最初の工程の開始時間を一定にして、総所要時間最小、すなわち早く作業を完了させるようにスケジューリングをおこなう。 後者は納期が厳しい場合、納期を最初に決めておいて所要時間最小に計算するスケジューリング法である。
3. スケジューリングの制約
例えばパンの生産においてすべての仕事が出来るだけ早く終われば良いという総所要時間最小という基準だけでなく、対象となる工程を最短にしたり、工程の効率すなわち稼働率や平準化を向上させたり、滞留時間を短縮したり、納期などが厳しい場合にには納期遅れを最小にすることを目標とするなど他の目標を重視する場合もあるし、これらのそれぞれの評価基準に対してそれぞれ重み付け加えた複合の基準を用いることもある。
実際にスケジューリングをする場合には種々の制約があり、代表的な制約を表1示した。
したがって制約の数が増えれば、制約を満足するかチェックする手間がかかるが、逆に制約をうまく利用すればスケジューリングの解法は容易になる場合もある。 (表1)
4. スケジューリングの方法
スケジューリングはどのようなタイプのものでも、工程へのジョブ(仕事)の割付に対して、最適な組合せを見つける組み合わせ最適化の問題である。この解法は大きく分けて、(1)一定のアルゴリズムを使って解く方法、(2)実際の生産プロセスをモデル化し、シミュレーションにより解く方法、(3)マン‐マシンインターフェースを用いて人間の意思決定を支援し、最終的には人間の判断に基づいてスケジュールを決定する方法がある。
スケジューリングにはいろいろな方法、考え方があるが、生産の最適な組合せをの計画し、生産性の向上に繋げなければならない。スケジューリングに用いるコンピューターソフトをスケジュラーと呼ぶ。
次回はいよいよパン工場の生産管理の難しさとスケジュラーについて言及する。
 
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