弘中泰雅著  生産性工場と顧客満足を実現する  食品工場の品質管理



日刊工業新聞社 2100円(税込)
全国有力書店、ネット書店で発売中

                                            佐賀大学図書館推薦図書

 本書を、初めて手に取られた方は、従来の食品工場の品質管理の本と、かなり違うと感じられたことでしょう。品質管理の基本原則は、何を対象にしても同じはずなのに、これ迄の食品工場の品質管理書の内容は、食品衛生中心で、残念ながら品質管理の基本原則に、ほとんど触れられていません。勿論、食品にとって食品衛生が、最も重要である事には、著者も全く異論は有りませんが、合わせて本来の品質管理の知識も、必要だと言う事です。
 ところで著者は、食品企業で支援をさせて頂く際、その企業の若手社員諸氏と会話をすることが有ります。そんな折によく聞くのは、「自分は品質管理の仕事をやりたかった」と言う話です。そこで「品質管理ではどんな仕事をしたかったのか」と聞くと、異口同音に「細菌検査とか・・」と返事が返ってきます。
 食品にも、本来の品質管理が有るはずなのに、食品業界では「品質管理≒食品衛生(細菌検査)」という誤解が有る様です。これには学校教育にも、原因がある様にも思えます。食品工場の生産性向上支援を行う中で、品質管理と生産管理は切り離せないものなので、食品衛生に留まらない、食品の品質管理教育の必要性を、強く感じる様になりました。
 一般に企業の競争力の根源は、QCD(品質・コスト・納期)と言われています。従って食品企業といえども、ビジネスにおいては、製品である食品の品質・コスト・納期は最も重要なはずです。そして、これらの要素の実現には、何れも品質管理が強く関わっています。
 ところが、従来の食品工場の品質管理の本には、品質管理の基本原理の記述はほとんど有りません。また、多くの品質管理の本は、機械などの組立型製造業の品質管理が中心で、化学的な変化を伴うプロセス型製造業である、食品製造業から見ると、その考え方や事例などの内容に、かなりの違和感があります。
 著者は、食品産業の品質管理に対する理解の低さが、今日の食品産業が、低生産性である原因の一つである、と考えています。このことが、本書を書かねばならないと思った理由です。
 実際、食品製造業の生産性は極めて低く、製造業平均の約60%しかありません。念の為に申し上げますが、自動車などの先端的な製造業と、比べてではありません。この現状をせめて20%程度は向上したいと、著者は考えておりますし、それは可能であると信じています。それには食品業界においても、品質管理の知識とその実行が是非とも必要です。
 品質管理の考え方と知識は、品質管理部門や生産部門のスタッフだけに、必要なのではありません。経営者や生産ラインの管理職・スタッフなどの、食品の研究開発・生産から販売に至るまでの、全ての皆様に、品質管理ついて、一度は是非再確認して頂きたいと考えています。
 本書は、著者が食品工場の支援活動を行う中で、多くの食品工場の経営者、管理職、一般社員の、皆様との関わりの中で得られた、経験、アイデア、示唆等をもとに、品質管理の改善による、食品業界の活性化を目標にして、書き上げました。
 本書により、本来の品質管理の考え方が、食品業界に浸透し、結果として、製品の品質が安定し、生産性の向上をさせ、食品業界が益々繁栄することに、少しでも貢献出来れば、著者のこの上ない喜びです。
 本書を食品工場改善の同志でもある、食品工場と食品関連の皆様に捧げたいと思います。
                                        (はしがきより)

 出版元の日刊工業新聞社の特約書店   アマゾン  アマゾンブックレビュー 
   日刊工業新聞ネットショップ
                            日本生産学会賞受賞 食品工場の生産管理       よくわかる「異常管理」の本

*書店によって、経営管理、経営工学、生産管理などの棚と、食品衛生、食品の品質管理、食品化学などの棚に並べられることがあるようです。

書評&新刊書紹介 
書 評 弘中泰雅著『食品工場の品質管理−生産性向上と顧客満足を実現する』 日刊工業新聞社  2012年8月発刊
                                                         関西学院大学教授  福井幸男
 1 はじめに

本書は、副題に「生産性向上と顧客満足を実現化する」とあるように、食品の衛生確保を大前提としたうえで、経済的合理性をも念頭においたテキストである。まさしく、書名通りの食品工場の品質管理のテキストである。前著『食品工場の生産管理−ムダをなくして利益を生む』の続編と見てよいだろう。 

 2 わが国の衛生行政と食中毒の実態
 わが国の食品行政を振り返ると、1947年に食品衛生法が制定されている。すでに65年が経過したことになる。当然のこととして、食中毒防止という側面が重い業界である。まず、最近5年間の食中毒の発生状況を厚生労働省HPから調べると、つぎのようになっている。2007年(患者33,477人、死者7人、以下同様)、2008年(24,303人、4人)、2009年(20,249人、0人)、2010年(25,972人、0人)、2011年(21,616人、11人)。死者は極めて少ないが、患者は万単位で毎年発生していて、マスメディアに大きく報道されることから、社会的な影響の大きいことが理解できよう。次に示す4枚の表は、厚生労働省のHPからデータを求めた1985年からの5年刻みの食中毒に関する統計である。まず、表1は事件数、患者数および死者数を示している。事件数の変動は小さくないけれども、患者数は三万人前後を数える。死者数は1桁前後で2010年は皆無である。
 表2は、食品別の発生状況を示している。複合調理食品とは、弁当類、調理パン類、複合惣菜類、どんぶり類を示す。その他と不明を除くと、6年間の累計では、魚介類987、複合調理食品536、野菜類及び加工品454が大きい。この項目の341件はきのこ類である。肉類および加工品は278である。

 表1  食中毒の事件数・患者数・死者数の推移           表2 食品別の食中毒の実態

     

 
    
 つぎの表3は、食中毒を起こした施設別の統計である。6年間の累計では、飲食店2670、家庭1030、旅館599、仕出屋474、事業場236、学校174、販売店94そして製造所68と続いている。製造所の範囲は工場を含むと思われるが、全体の0.87%にとどまる。長年のわが国衛生管理行政のひとつの到達点と見てよいだろう。
 つぎの表4は、病因物質別の食中毒の発生件数を示している。細菌が全体の70.6%、ノロウィルスが11.7%そして自然毒が8.0%であり、細菌が食中毒の最大の病因であることがわかる。細菌の中でも、腸炎ビブリオ(海水中の細菌で魚介類を生食して感染)1694、カンピロバクター(牛、豚、鶏、あるいはペットなどの腸管内にカンピロバクターは存在し、これらの動物の排泄物により汚染された食品や水を介して感染)1564、そしてサルモネラ菌(鶏卵に由来することが多い)1125の被害が大きい。

  表3 食中毒の施設別発生件数の推移              表4  病因物質から見た食中毒の実態

    

3 食品衛生管理と経済的な安定
 前章で示したように、食中毒による死者が極めて少数であるとしても、厳密な食品衛生管理をないがしろにしては食品工業の信頼は成り立ち得ない。このことを十二分に承知している著者があえて筆を取って、経済的にもペイできる品質管理の側面を解説したテキストである。食品産業の大きな特徴として、他の製造業と根本的に異なるのは、「食品にとっての使用とは喫食する事であり、使用と同時に食品は消滅してしまう。食品においては、食味、栄養、利用の簡便さ、デザイン等の印象が、消費者の使用品質に相当する(p.47)」ことである。したがって、一方で食品安全面、他方で経済面、この両者をいかにうまくバランスを取るか、あるいは取れるかに食品メーカーの盛衰がかかっているとは言いすぎであろうか。

4 本書の構成と主張

 本書を通観して評者は、非常に幅広くこのテーマに接近しているとの印象を持った。第T章品質管理、第U章品質保証、第V章品質問題解決の手法、第W章品質管理の手法、第X章統計的品質管理(SQC)、第Y章食品の品質管理法がその目次である。

 まず、筆者はこの産業の生産性が製造業の約6割の低水準に甘んじていることに警鐘を鳴らす。この原因のひとつに、筆者が再三指摘しているように、業界が「食品の品質管理≒微生物調査という勘違い(p.11)」をしていると断じる。そして業界が全体として満足な品質管理水準には到っていないと苦言を呈している。業界が余りに安全にとらわれすぎているという。このために、「工業製品の工場で行われているような、経済的生産が実践されないまま、品質保証をおこなわざるをえない(p.70)」のである。ISO9001やISO22000が導入されたものの付け焼刃となった工場が少なくないとのことである。
 実際、評者も大手製粉メーカーの経営者の一人から、眉毛が落ちていたというクレームに対処するために半導体業界のクリーンルームで使用されている高精度のマシーンを導入していると聞いたことがある。
 本書の冒頭の紹介に、JISの定義は、「買手の要求に合った品質の品物またはサービスを経済的に作り出すための手段の体系」と念を押している。経済的な観点を前面に押し立てて、品質管理には、@製品やサービスの品質保証と、A品質の改善および業務の改善があるだろう。第U章は@を扱い、第V章はAの業務改善、そして第W章以降はAの品質保証を扱っていると思われる。

 第U章では著者は絶えず「作りこむ品質」の重要性を指摘する。食品メーカーの実際の品質保証業務が出荷検査主体だけならば、それは真の品質保証ではないと断言する。すなわち、研究開発段階から生産工程段階、検査段階、補償段階そして品質の情報伝達段階の一連の流れがすべて品質保証に関わっていなければいけないとする。たとえば、電機業界において、製品の設計段階でビスを多用するならば、ビス取り付け時間を半減しても生産性はそれほどあがらないだろう。同様に、食品工業では、使用材料が多すぎたり、計量に時間がかかりすぎたり、仕込み作業が複雑すぎたり、製法に微妙な調整を要求させられたりしては、安定した品質の食品は望めないとしている。作りこむ品質の意義は明らかである。「研究が終わったら、後は製造の責任(p.47)」では、満足な品質保証はできないのである。

第V章の品質問題解決の手法では、食品を製造してから検査するのではなく、研究開発から製造・販売の全プロセスのなかで、ここでも「作りこむ品質(p.95)」を実現しなければいけないことを力説している。多くの食品工場では、歯ごたえとか味といった官能的な側面が品質に関する指標となるので、具体的な品質目標が曖昧になるという。そこで、著者のひとつの提案に、外観、成分・味覚、風味・香り、テクスチャ、価格、量目、ブランド力を基点としたレーダーチャートがある。これを描いての他社との比較分析の可能性を示していることは興味深い。こうした試行錯誤の作業を繰り返すことで、自社の抱える問題点が明白となり、ひいては、問題が問題として認識されないのが最大の問題というこの業界の悪弊が正される可能性があることを示唆している。

具体的な生産現場が直面する問題を職場が共有したとして、次はどうするのか。著者はその問題の発生にばらつきが果たしてあるのかどうか、そしてあるとしたらそれはいつも起きるのか、ときどきなのか、またどんな工程や機械箇所で起きているのかを把握することが肝要だという。顧客満足の観点から顧客の意見にすり寄ってしまうと、作り方に手間ひまがかかって工場の生産効率が停滞して品質が安定しないという。研究開発から製造・販売の全工程の流れの価値連鎖の重要性を何度も述べている。

第W章の品質管理手法では、QC七つ道具と新QC七つ道具を取り上げている。前者が数値データ、後者が言語データを分析するという記述も簡潔明瞭である。とくに、評者には、特性要因図の解説は非常にわかりやすい。品質のばらつきの原因が要因であり、品質特性に影響する可能性のあるすべての要因を洗い出して図示する、これが特性要因図であるという。「特性要因図の特性とは、因果関係の結果である(p.116)」という一文も簡潔明瞭である。パンの高さ不足に関する特性要因図(p.118)の説明は成功している。ここでは、パンの高さ不足事例、パン生地の膨らみ不足、ケーキの外皮焼け色濃などの欠陥など多彩に具体的な事例を数多く紹介している。類書にはないものでわかりやすい。ただ、この例に限らず、やや網羅的な記述説明であって、もう一歩深いケーススタディ的な紹介があれば、より読者の理解が深まったと思われる。著者には長年のコンサルタントのご経験からその方面の知識は豊富と思われるのでとくにその思いが強い。

第X章と第Y章は、統計的な手法の解説である。ただ、第X章の説明は羅列的である。しかし、第六章は食品に適した官能検査法の説明もあり、すぐにも応用できるように平易に説明している。 繰り返しを恐れるが、食品工業に深くかかわった著者ならでは指摘やコメントは具体的で興味深い。食品の落下強度の話や内容量の過量は興味深い。落下強度を上げても費用がかさむだけで利益には結びつかないし、利益率3%で過量3%ならば利益は出ないことになるからである。「過剰品質は経営を圧迫するだけだ(p.49)」。食品の包装不良の事例も興味深い。貴重な事例なので、詳しい説明と対処結果があれば、より説得的になったのではないかと惜しまれる。

5 今後の課題
 最初の章に、業界毎のQCサークル数と全要素生産性の関係を示す図がある。示唆に富むものである。しかし、それがどのような脈路で生産性向上に資しているのかは明示されていない。この関連で、本書を通じて、職場は「問題解決の場(p.73)」と強調しているのだから、QCサークルについて成功例を含めて詳しく記述されるべきであったと思うのは評者一人ではないだろう。
 一般論として、生産管理や品質管理のテキストを学生達と読み進んでいって、私も学生も不満に思うことがある。生産現場のイメージがなかなか浮かばないという点である。このために、とくに生産現場を全く知らない多くの学生には、もう一歩踏み込むことができない。サービス業の現場にはアルバイト生として勤務している場合もあって、イメージはつかみやすい。しかし、ものづくりの現場となると学生には疎遠なことになる。
 テキストという制約があるためか、きわめて興味深い豊富な食品業界の事例が簡単な紹介や数値例の段階で止まっている事例が散見された。契約企業との守秘義務のためであろうか。ないものねだりは十二分に承知しているが、ある特定の食品企業に的を絞って、ハーバードのビジネススクールのような徹底的なケーススタディを期待したい。 本書が、副題通り、食品工場の品質管理に大きな貢献をされることを願っている。

 魚水  第56号(秋冬号)  平成24年12月発行
 食品業界では「品質管理≒食品衛生(細菌検査)」という誤解が有る様です。品質管理と生産管理は切り離せないもので、食品企業における品質管理教育の必要性を強く感じています。企業競争力はQCD(品質・コスト・納期)です。従って品質・コスト・納期は経営に最も重要なはずです。
 ところが従来の食品の品質管理書は食品衛生中心で、日本の製造業に繁栄をもたらした、本来の品質管理の記述はほとんど有りません。食品産業の品質管理に対する理解の低さが、低生産性をもたらした原因の一つであると考えており、本書を書かねばならないと思った理由です。
 本書では品質管理と品質保証の違いを定義し、食品工場の品質部門が陥りがちな誤りを指摘し、品質管理の考え方と取り組み方について詳しく解説しました。検査主体の品質管理から正しい品質管理を実施するために必要な「作り込む品質」など具体的手法を紹介し、初心者でも理解しやすく活用しやすく著しました。

  パンニュース  2012年(平成24年)10月15日(月曜日)
  食品工場の品質管理  弘中泰雅著
 生産性向上と顧客満足を実現する、をサブタイトルとした「食品工場の品質管理」が発刊された。日刊工業新聞社刊。弘中泰雅氏(テクノバ)は昨年来「よくわかる『異常管理』の本」、「食品工場の生産管理」を著わし、今回が3冊目。
 著者によると、これまでの品質管理=食品安全(細菌検査)という誤解を打ち破り、本来の品質管理を知らしめたいとの思いからまとめたものという。食品にとっての食品安全は絶対必要条件としながら、食品安全だけでは品質の差別化は出来ないとの考え方に立つ。
 序章の食品の品質管理に対する勘上げ方に始まり、品質問題の解決の手法、品質管理の手法など詳述。「食品産業の理解の低さが、今日の食品産業の低生産性の一因である」と食品工場の問題点を指摘している。
 なお「食品工場の生産管理」はこのほど、日本生産管理学会賞を受賞。

  ブランスリー 10月号 ブランスリー報道社 平成24年9月20日
  生産性を上げる品質管理の本 日刊工業新聞社刊
 日刊工業新聞社刊。 「生産性向上と顧客満足を実現する 食品工場の品質管理」。 著者は、生産管理ソフト開発のテクノバ、弘中泰雅社長。2012年8月30日発行。税込2100円。 これまでの食品工場の品質管理の書籍が、食品衛生を中心に扱っていて、コスト管理や納期管理まで深くかかわってくる本来の品質管理に触れていないことに着目し、衛生管理のみに偏ることなく、コスト管理や納期管理、生産性管理なども含めた本来的な意味での食品の品質について、詳しく説明している。

  食品機械装置 10月号 ビジネスセンター社 平成24年9月20日
 新刊のご紹介
 『生産性向上と顧客満足を実現する 食品工場の品質管理』
  お問い合わせ テクノバ(株) URL http://www.technova.ne.jp

  水産タイムス 2012年9月17日
  新刊紹介 弘中泰雅著「食品工場の品質管理」
   ―生産性向上と顧客満足を実現する―
 弘中泰雅著による―「食品工場の生産管理」(190ページ2000円)が日刊工業新聞社から発刊された。著者は食品産業における品質管理=食品衛生(細菌検査)と誤解されていると指摘。本来の食品工場における品質管理は生産性向上と切り離せないもので、食品の品質管理教育の必要性を説いている。そして、品質管理に対する理解の低さが低生産性であることが原因とし、経営者、生産ラインの管理職、スタッフをはじめ、生産から販売までのすべての社員が品質管理についての認識を持ち、生産性を改善することが必要としている。食品製造に関係する人の必携の書。
 本書の内容は、序章=食品の品質管理に対する考え方、I章 品質管理、 II章 品質保証(@製造物責任A顧客満足度BISO9001CISO22000など)、III章 品質問題解決の手法、IV章 品質管理の手法、V章 統計的品質管理(SQC)、VI章 食品の評価法

  日本生産性本部 生産性新聞 2012年(平成24年)9月15日(土)
  新刊紹介 『食品工場の品質管理』
 食品製造業における生産性の低さが指摘されるが、著者はその原因として、一般的な製造業でいう品質管理に対する理解不足をあげる。そこで、本書では食品工場の品質管理のノウハウを具体的事例を交えわかりやすく解説し、「攻めの品質管理」によって、より一層の生産性向上と経営の向上を目指す。
 著者は、長年にわたり食品工場の生産性向上や品質管理について研究を続け、コンサルティング活動にも精力的に取り組んでいる。すぐに実践できるヒントが数多く盛り込まれる本書は、多くの示唆に富む。(日刊工業新聞社、190n、本体価格2000円)
 
  ベーカーズタイムス  平成24年9月10日
  新刊書「食品工場の品質管理」を発刊
 テクノバ(株)弘中泰雅氏著「食品工場の品質管理」が8月30日、日刊工業新聞社より発刊された。同書では、「食品産業での本当の『品質管理』とは。それが分れば利益が増えると。」と銘打ち、微生物(細菌)検査や異物混入に対する品質保証には熱心だが、工業製品の製造業でいう品質管理が行われていないと指摘。そのため不良やクレームに対する予防措置が放置され、製造工程における作り込む品質の実行がされず、生産性を悪化させ食品企業の利益を圧迫していると言う。など食品工場の品質管理のノウハウを具体的事例を交えて分り易く解説。
 食品業に蔓延る検査主体の品質保証・表示・クレーム書類作成といった守りの品質保証から作り込む品質への転換を図り、攻めの品質管理に改革することを著している。食品衛生に偏向した食品の品質管理書と大幅に異なる、正統的な品質管理書で、開発から生産・販売に至る全ての担当者を対象とし、QC検定を目指す人にも参考に成る。


     

カスタマ―ブックレビュー
 
・食品産業に関係する全ての方にお勧めします 2012/9/23
By kawachiのtoshi
 まず冒頭、筆者は品質管理と品質保証の違いを明快に定義したうえで
食品工場の品質部門が陥りがちな誤りを鋭く指摘される。
目からうろこの落ちる思いである。
 前半、品質管理と品質保証の考え方と取り組み方について詳しく解説され、
後半それを実施するために必要な具体的手法を紹介する構成となっており、
初心者であっても理解しやすく、活用しやすい。
 また、筆者の指導経験に裏付けられたノウハウが各所にちりばめられており、
ベテランであっても気づかされ、ハッとすることが多いことだろう。
 品質部門は、本来、生産性向上に貢献するプロフィット部門に変わりうるはずである
という筆者の主張は、本書全体に貫かれており食品産業に対する愛情を感じさせる。
 品質部門だけではなく食品産業にかかわる、経営者から現場従業員に
至るまで、すべての人に一読をお勧めしたい。

・食品工場に本当に必要な「品質管理」がなにかがわかる本です。 2012/9/20
By
林 芳樹
食品工場ではよく「品質管理」と「品質保証」をごちゃごちゃに理解されている方が少なくありませんが、この本はその違いや、本当に必要な品質管理がなにかを理解させてくれるとてもわかりやすい本だと思います。
食品工場の経営者や管理者のみならず、スタッフや現場ご担当者等、すべての方が一読されることをお勧めします。


 目次

はじめに

序章 食品の品質管理に対する考え方

第I章 品質管理
     
 1 品質とは
   (1)生産段階による品質管理
   (2)品質の種類
 2 品質管理とは
 3 品質管理の目的
 4 TQM(総合的品質管理)
 5 品質管理のしくみ
   (1)品質管理の考え方
   (2)PDCAサイクル
   (3)事実による管理
   (4)プロセス管理
   (5)重点指向
   (6)層別
   (7)ばらつきの探求
   (8)小集団活動
   (9)日常管理
   (10)機能別管理
   (11)方針管理
   (12)管理項目
   (13)QC診断

第II章 品質保証
 1 品質保証とは
 2 品質保証の考え方と方法 
 3 品質保証活動のステップ(段階)
   (1)品質計画(目標の設定)段階
   (2)品質の確保(作り込み)段階
   (3)品質の確認(検査)段階
   (4)品質の約束段階
   (5)品質の情報伝達段階
 4 品質保証システム
 5 品質展開
 6 製造物責任(PL)
 7 顧客満足度
 8 ISO9001
   (1)ISO9001
   (2)ISO9004
 9 ISO22000
 10 食品工場の品質管理とISO
 11 品質保証部門の役割
 

第III章 問題解決の手法
 1 問題とは?
 2 問題のタイプ
 3 問題解決のステップ
 4 QC的問題解決法(原因指向型QCストーリー)
   (1)テーマの選定
   (2)現状の把握
   (3)目標の設定
   (4)要因の解析
   (5)対策の立案と実施
   (6)効果の確認
   (7)歯止めと定着
   (8)反省と今後の計画
 



 5 課題達成型QCストーリー
 6 作り込む品質
 7 8S(5S)
 8 品質不良コスト

第IV章 品質管理の手法
 1 QC七つ道具
   (1)パレート図
   (2)チェックシート
   (3)ヒストグラム
   (4)散布図
   (5)管理図
   (6)グラフ
   (7)特性要因図
 2 新QC七つ道具
   (1)連関図
   (2)系統図
   (3)マトリックス図
   (4)PDPC
   (5)アロー・ダイヤグラム/ガントチャート
   (6)親和図
   (7)マトリックス・データ解析法

第V章 統計的品質管理(SQC)
 1 統計学の基本
   (1)データの種類
   (2)データ収集
   (3)データ数値的要約(統計量)
   (4)正規分布(計量値の分布)
   (5)二項分布とポアソン分布(計数値の分布)
   (6)母集団と標本
   (7)仮説検定
   (8)推定
 2 相関分析
 3 回帰分析
 4 分割表
 5 抜取検査
   (1)統計理論による抜取検査
   (2)標準型抜取検査
 6 工程能力
 7 サンプリング
 8 実験計画法
 9 多変量解析

第VII章 食品の品質評価法
 1 官能評価と官能検査
   (1)パネル
   (2)パネルの能力
   (3)食品に適した官能検査法
 2 食品の理化学的分析・評価技術
   (1)クロマトグラフィ―
   (2)磁気共鳴イメージング(MRI)
   (3)そしゃく計測

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