弘中泰雅著 生産性工場と顧客満足を実現する 食品工場の品質管理 | |||||
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書評&新刊書紹介 |
書 評 弘中泰雅著『食品工場の品質管理−生産性向上と顧客満足を実現する』 関西学院大学教授 福井幸男 |
1 はじめに 本書は、副題に「生産性向上と顧客満足を実現化する」とあるように、食品の衛生確保を大前提としたうえで、経済的合理性をも念頭においたテキストである。まさしく、書名通りの食品工場の品質管理のテキストである。前著『食品工場の生産管理−ムダをなくして利益を生む』の続編と見てよいだろう。 2 わが国の衛生行政と食中毒の実態 表1 食中毒の事件数・患者数・死者数の推移 表3 食中毒の施設別発生件数の推移
第U章では著者は絶えず「作りこむ品質」の重要性を指摘する。食品メーカーの実際の品質保証業務が出荷検査主体だけならば、それは真の品質保証ではないと断言する。すなわち、研究開発段階から生産工程段階、検査段階、補償段階そして品質の情報伝達段階の一連の流れがすべて品質保証に関わっていなければいけないとする。たとえば、電機業界において、製品の設計段階でビスを多用するならば、ビス取り付け時間を半減しても生産性はそれほどあがらないだろう。同様に、食品工業では、使用材料が多すぎたり、計量に時間がかかりすぎたり、仕込み作業が複雑すぎたり、製法に微妙な調整を要求させられたりしては、安定した品質の食品は望めないとしている。作りこむ品質の意義は明らかである。「研究が終わったら、後は製造の責任(p.47)」では、満足な品質保証はできないのである。 第V章の品質問題解決の手法では、食品を製造してから検査するのではなく、研究開発から製造・販売の全プロセスのなかで、ここでも「作りこむ品質(p.95)」を実現しなければいけないことを力説している。多くの食品工場では、歯ごたえとか味といった官能的な側面が品質に関する指標となるので、具体的な品質目標が曖昧になるという。そこで、著者のひとつの提案に、外観、成分・味覚、風味・香り、テクスチャ、価格、量目、ブランド力を基点としたレーダーチャートがある。これを描いての他社との比較分析の可能性を示していることは興味深い。こうした試行錯誤の作業を繰り返すことで、自社の抱える問題点が明白となり、ひいては、問題が問題として認識されないのが最大の問題というこの業界の悪弊が正される可能性があることを示唆している。 具体的な生産現場が直面する問題を職場が共有したとして、次はどうするのか。著者はその問題の発生にばらつきが果たしてあるのかどうか、そしてあるとしたらそれはいつも起きるのか、ときどきなのか、またどんな工程や機械箇所で起きているのかを把握することが肝要だという。顧客満足の観点から顧客の意見にすり寄ってしまうと、作り方に手間ひまがかかって工場の生産効率が停滞して品質が安定しないという。研究開発から製造・販売の全工程の流れの価値連鎖の重要性を何度も述べている。 第W章の品質管理手法では、QC七つ道具と新QC七つ道具を取り上げている。前者が数値データ、後者が言語データを分析するという記述も簡潔明瞭である。とくに、評者には、特性要因図の解説は非常にわかりやすい。品質のばらつきの原因が要因であり、品質特性に影響する可能性のあるすべての要因を洗い出して図示する、これが特性要因図であるという。「特性要因図の特性とは、因果関係の結果である(p.116)」という一文も簡潔明瞭である。パンの高さ不足に関する特性要因図(p.118)の説明は成功している。ここでは、パンの高さ不足事例、パン生地の膨らみ不足、ケーキの外皮焼け色濃などの欠陥など多彩に具体的な事例を数多く紹介している。類書にはないものでわかりやすい。ただ、この例に限らず、やや網羅的な記述説明であって、もう一歩深いケーススタディ的な紹介があれば、より読者の理解が深まったと思われる。著者には長年のコンサルタントのご経験からその方面の知識は豊富と思われるのでとくにその思いが強い。 第X章と第Y章は、統計的な手法の解説である。ただ、第X章の説明は羅列的である。しかし、第六章は食品に適した官能検査法の説明もあり、すぐにも応用できるように平易に説明している。 繰り返しを恐れるが、食品工業に深くかかわった著者ならでは指摘やコメントは具体的で興味深い。食品の落下強度の話や内容量の過量は興味深い。落下強度を上げても費用がかさむだけで利益には結びつかないし、利益率3%で過量3%ならば利益は出ないことになるからである。「過剰品質は経営を圧迫するだけだ(p.49)」。食品の包装不良の事例も興味深い。貴重な事例なので、詳しい説明と対処結果があれば、より説得的になったのではないかと惜しまれる。 5 今後の課題 |
魚水 第56号(秋冬号) 平成24年12月発行 食品業界では「品質管理≒食品衛生(細菌検査)」という誤解が有る様です。品質管理と生産管理は切り離せないもので、食品企業における品質管理教育の必要性を強く感じています。企業競争力はQCD(品質・コスト・納期)です。従って品質・コスト・納期は経営に最も重要なはずです。 ところが従来の食品の品質管理書は食品衛生中心で、日本の製造業に繁栄をもたらした、本来の品質管理の記述はほとんど有りません。食品産業の品質管理に対する理解の低さが、低生産性をもたらした原因の一つであると考えており、本書を書かねばならないと思った理由です。 本書では品質管理と品質保証の違いを定義し、食品工場の品質部門が陥りがちな誤りを指摘し、品質管理の考え方と取り組み方について詳しく解説しました。検査主体の品質管理から正しい品質管理を実施するために必要な「作り込む品質」など具体的手法を紹介し、初心者でも理解しやすく活用しやすく著しました。 |
パンニュース 2012年(平成24年)10月15日(月曜日) 食品工場の品質管理 弘中泰雅著 生産性向上と顧客満足を実現する、をサブタイトルとした「食品工場の品質管理」が発刊された。日刊工業新聞社刊。弘中泰雅氏(テクノバ)は昨年来「よくわかる『異常管理』の本」、「食品工場の生産管理」を著わし、今回が3冊目。 著者によると、これまでの品質管理=食品安全(細菌検査)という誤解を打ち破り、本来の品質管理を知らしめたいとの思いからまとめたものという。食品にとっての食品安全は絶対必要条件としながら、食品安全だけでは品質の差別化は出来ないとの考え方に立つ。 序章の食品の品質管理に対する勘上げ方に始まり、品質問題の解決の手法、品質管理の手法など詳述。「食品産業の理解の低さが、今日の食品産業の低生産性の一因である」と食品工場の問題点を指摘している。 なお「食品工場の生産管理」はこのほど、日本生産管理学会賞を受賞。 |
ブランスリー 10月号 ブランスリー報道社 平成24年9月20日 生産性を上げる品質管理の本 日刊工業新聞社刊 日刊工業新聞社刊。 「生産性向上と顧客満足を実現する 食品工場の品質管理」。 著者は、生産管理ソフト開発のテクノバ、弘中泰雅社長。2012年8月30日発行。税込2100円。 これまでの食品工場の品質管理の書籍が、食品衛生を中心に扱っていて、コスト管理や納期管理まで深くかかわってくる本来の品質管理に触れていないことに着目し、衛生管理のみに偏ることなく、コスト管理や納期管理、生産性管理なども含めた本来的な意味での食品の品質について、詳しく説明している。 |
食品機械装置 10月号 ビジネスセンター社 平成24年9月20日 新刊のご紹介 『生産性向上と顧客満足を実現する 食品工場の品質管理』 お問い合わせ テクノバ(株) URL http://www.technova.ne.jp |
水産タイムス 2012年9月17日 新刊紹介 弘中泰雅著「食品工場の品質管理」 ―生産性向上と顧客満足を実現する― 弘中泰雅著による―「食品工場の生産管理」(190ページ2000円)が日刊工業新聞社から発刊された。著者は食品産業における品質管理=食品衛生(細菌検査)と誤解されていると指摘。本来の食品工場における品質管理は生産性向上と切り離せないもので、食品の品質管理教育の必要性を説いている。そして、品質管理に対する理解の低さが低生産性であることが原因とし、経営者、生産ラインの管理職、スタッフをはじめ、生産から販売までのすべての社員が品質管理についての認識を持ち、生産性を改善することが必要としている。食品製造に関係する人の必携の書。 本書の内容は、序章=食品の品質管理に対する考え方、I章 品質管理、 II章 品質保証(@製造物責任A顧客満足度BISO9001CISO22000など)、III章 品質問題解決の手法、IV章 品質管理の手法、V章 統計的品質管理(SQC)、VI章 食品の評価法 |
日本生産性本部 生産性新聞 2012年(平成24年)9月15日(土) 新刊紹介 『食品工場の品質管理』 食品製造業における生産性の低さが指摘されるが、著者はその原因として、一般的な製造業でいう品質管理に対する理解不足をあげる。そこで、本書では食品工場の品質管理のノウハウを具体的事例を交えわかりやすく解説し、「攻めの品質管理」によって、より一層の生産性向上と経営の向上を目指す。 著者は、長年にわたり食品工場の生産性向上や品質管理について研究を続け、コンサルティング活動にも精力的に取り組んでいる。すぐに実践できるヒントが数多く盛り込まれる本書は、多くの示唆に富む。(日刊工業新聞社、190n、本体価格2000円) |
ベーカーズタイムス 平成24年9月10日 新刊書「食品工場の品質管理」を発刊 テクノバ(株)弘中泰雅氏著「食品工場の品質管理」が8月30日、日刊工業新聞社より発刊された。同書では、「食品産業での本当の『品質管理』とは。それが分れば利益が増えると。」と銘打ち、微生物(細菌)検査や異物混入に対する品質保証には熱心だが、工業製品の製造業でいう品質管理が行われていないと指摘。そのため不良やクレームに対する予防措置が放置され、製造工程における作り込む品質の実行がされず、生産性を悪化させ食品企業の利益を圧迫していると言う。など食品工場の品質管理のノウハウを具体的事例を交えて分り易く解説。 食品業に蔓延る検査主体の品質保証・表示・クレーム書類作成といった守りの品質保証から作り込む品質への転換を図り、攻めの品質管理に改革することを著している。食品衛生に偏向した食品の品質管理書と大幅に異なる、正統的な品質管理書で、開発から生産・販売に至る全ての担当者を対象とし、QC検定を目指す人にも参考に成る。 |
●カスタマ―ブックレビュー |
・食品産業に関係する全ての方にお勧めします 2012/9/23
By kawachiのtoshi
まず冒頭、筆者は品質管理と品質保証の違いを明快に定義したうえで
食品工場の品質部門が陥りがちな誤りを鋭く指摘される。 目からうろこの落ちる思いである。 前半、品質管理と品質保証の考え方と取り組み方について詳しく解説され、 後半それを実施するために必要な具体的手法を紹介する構成となっており、 初心者であっても理解しやすく、活用しやすい。 また、筆者の指導経験に裏付けられたノウハウが各所にちりばめられており、 ベテランであっても気づかされ、ハッとすることが多いことだろう。 品質部門は、本来、生産性向上に貢献するプロフィット部門に変わりうるはずである という筆者の主張は、本書全体に貫かれており食品産業に対する愛情を感じさせる。 品質部門だけではなく食品産業にかかわる、経営者から現場従業員に 至るまで、すべての人に一読をお勧めしたい。 ・食品工場に本当に必要な「品質管理」がなにかがわかる本です。 2012/9/20
By 林 芳樹 食品工場ではよく「品質管理」と「品質保証」をごちゃごちゃに理解されている方が少なくありませんが、この本はその違いや、本当に必要な品質管理がなにかを理解させてくれるとてもわかりやすい本だと思います。
食品工場の経営者や管理者のみならず、スタッフや現場ご担当者等、すべての方が一読されることをお勧めします。 |
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