2012年 日本穀物科学研究会
第149回例会総会
2012年5月18日(金)13:00より高津ガーデンで開催しました。 |
テーマ | 『デンプン、タンパク質成分における穀物科学研究の現状と今後の展開』 | |||
講演 | 「放射能汚染1年後の現在における各種食品への影響の現状と今後の課題」 中田邦彦氏((財)日本冷凍食品検査協会検査本部 品質保証部次長) |
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中田邦彦氏 | ||||
「ベトナムの伝統的なデンプンベースの麺類:その分類、加工、利用および栄養特性」 Dr.Pham Van Hung (ホーチミン国際大学 講師) |
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Vietnamese traditional starach-based noodles: classification, processing, utilization and improvement of nutritional quality (School ofBiotechnology, International University, Vietnam National University in HoChiMinh City, Vietnam) デンプンベースの麺類は古来からベトナムでは伝統的な食品である。麺類は米粉、マングビーン、可食性カンナデンプンあるいは小麦粉から製造されている。本シンポジウムでは米、マングビーン、可食性カンナ、小麦等異なった素材から伝統的に製造されるデンプンベースの麺類の分類、加工技術、利用について概説する。さらに、最近に我々の研究室で行った麺類の栄養特性の改善についても述べる。 米はベトナムの主要穀類であるため、多種類の麺類が米粉より作られる。ベトナムは北、中部、南ベトナムと3区域にわけられた、それぞれ異なった区域で製造される米粉ベースの麺類はそれぞれ異なったテクスチャー、外観、品質を持っている。平べったい米粉麺(Pho) 薄手の米粉ハルサメ(bun)は北、中部ベトナムで最もよく食されている。一方、薄手で、ほぼ四角形の米粉麺(hu tieu)、厚手の米粉麺(banh canh)は通常は南ベトナムで製造されている。この米粉麺は米粉に水を加え混合し、綿製のシートの表面で伸ばし、次いで沸騰水上で蒸し通常は紐状に切断されるが、ハルサメの場合は押出し(エクストルード)される。これらの米粉麺は通常の朝食として食されている。 透明な(ガラスのように)麺類(Mien)は伝統的にマングビーンあるいはカンナデンプンから作られごく一般的に食べられている。この透明な麺類は異なった形状、色調をしているが、これは使用した穀類材料とその加工技術に起因する。白色透明が買った麺類はカンナデンプンから作られるが、黄色透明がかった麺類はマングビーンデンプンから作られ、この色調は存在するフェノール化合物に依存する。これらの透明な麺類は通常の朝食、あるいは伝統的なお祭りの折に用いられる。 小麦粉ベースの麺類も生産されベトナムで消費されるが一般的ではなく、インスタントラーメンは毎日でも食べられる。この加工技術は消費の目的により異なっている。 最近、難消化デンプン(RS)が消費者の健康メリットの観点から注目を集めている。このRSの形成は水の含量と温度により影響を受けることが明らかにされてきた。少量の水がデンプン粒子の膨潤、崩壊、および結晶構造への取り込みに必要である。我々の最近の研究では枝切りと保存温度の組み合わせがデンプンのRS含量を増加させ、このことが伝統的なデンプンベースの麺類の栄養特性の改善に結びつくのであろう。 |
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Dr.Pham Van Hung | ||||
穀類デンプンを中心としに最近のデンプンの話題 光永俊郎(近畿大学 名誉教授) |
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我々にとってコムギ、コメ、トウモロコシ、オオムギなどの穀物は重要な食料である。これらは主要なエネルギー供給源として炭水化物、タンパク質、脂質を含んでいる。特にこれらの穀物の炭水化物の主成分はデンプンである。デンプンはセルロースについで自然界に多量に存在するリサイクル生物資源である。とりわけ、穀物中のデンプンはエネルギー源であるだけでなく、食品・食物の食味、加工・調味特性などに大きな影響を与える。また、デンプンからつくられる種々の食料素材は重要な役割を果たしている。さらに、デンプンは繊維、医薬、化学工業などのいろいろな分野でも広く利用されている。現在、デンプン科学は以下の3研究分野で、それぞれ目覚ましい発展を遂げている。 基礎科学 1、生合成と分解、 2、デンプンの構造、 3、化学反応、 4、機能的性質 応用科学 1、各種デンプンの製造と利用、 2、各種化工デンプンの製造と利用、 3、デンプン起源糖質と利用 デンプン関連酵素化学 1、種類と構造、 2、作用特性と利用 今回の150回例会では穀物デンプンを中心に最近の話題として下記の事項を紹介する。 1 デンプンの生合成 イネを中心にデンプン生合成過程の基本的なスキームが明らかにされてきた。デンプン生合成のグルコース供与体は、ADPグルコースピロホスホリラーゼによってグルコース1−リン酸から合成されるADPグルコースである。アミロースの基本形はデンプン粒結合性スターチシンターゼによって、アミロペクチンの基本形は可溶性スターチシンターゼ、デンプン枝作り酵素、デンプン枝切り酵素の共同作用で形成される。 2 デンプン構成分子の微細構造 デンプンの構成成分のアミロースとアミロペクチンの微細構造の解析に必要なそれぞれ純粋の標品の調製が可能になったことと、アミロースとアミロペクチンの還元性末端グルコース残基の蛍光標識法の開発により、分子の微細構造がより明確になった。このことにより、穀類はじめすべての植物種のアミロースには直鎖と分岐をもつアミロースが存在する。植物種によって分岐アミロース分子数(モル)の組成比も明らかにされている。また、アミロペクチンにつういて分子数の分布から、アミロペクチンには大きさの異なる3つの分子種からなり、穀類や根茎類ともに大きな分子種が主成分であることが示されている。 3 デンプンの分子組成・構造と機能耐性 アミロース含量とグリセミック指数、調理特性、食味特性 |
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光永俊朗氏 | ||||
小麦タンパク質と製パン性 裏出 令子(京都大学大学院農学研究科 教授) |
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小麦タンパク質の量と質は小麦粉製品の品質に重要であります。特に、パンの品質にタンパク質が与える影響は大きく、小麦粉に水を加えて捏ねることによって形成されるタンパク質の混合物であるグルテンの物性が重要です。グルテンを構成している主要なタンパクはグリアジンとグルテニンで、非常に古くから研究されてきました。しかし、水に難溶性であること、構成サブユニットの種類が多く複雑であること、複合耐あるいは重合体のサイズが巨大であることなどが基礎的な研究を妨げてきました。言い換えると、研究者にとってまだまだ未知の領域が多い興味深い研究テーマであると言えます。本シンポジウムでは裏出がグリアジンとグルテニンに関して最近見出した現象を中心に、これらのタンパク質と食品加工特性との関係についてお話します。 最初は、食塩とグリアジンの不思議な関係についてお話します。パンやうどんなどの食品加工において、食塩(塩化ナトリウム)は欠かすことの出来ない副材料です。最も重要な食塩の効用は生地の物性の改善であり、生地が引き締まって弾性(伸展性と抗張力)が増し粘弾性が減少します。食塩のこのような効果は、グルテン形成の際のグルテニンやグリアジンのタンパク質間相互作用に対する影響によるものです。食塩の有無によるタンパク質間相互作用の変化と、これに付随して発見したグリアジンの水溶性化について紹介します。 次に、グルテニンの分子間ジスルフィド結合と還元化合物及び酵素との関係についてお話します。グルテニンは、高分子量グルテニンサブユニットが分子間ジスルフィド結合によって重合化したタンパク質ですが、この重合度は小麦の品種によって異なり、また栽培環境によっても変化します。生地の強さ(抗張性)や伸展性を支配しているのは主にグルテニンであり、その中でも特に重合度が高いグルテニン(グルテニンマクロポリマー)の量が多いほど生地が強くなります。生地のミキシングの過程でグルテニンマクロポリマーの量が変化しますが、この変化にグルタチオンのような低分子還元化合物とプロテインジスルフィドイソメラーゼという酵素がどように関わっているかお話します。 |
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裏出令子氏 | ||||
懇親会 | ||||
連絡先 | 三宅製粉梶@(〒544‐0034 大阪市生野区桃谷3−2−5) 日本穀物科学研究会事務局 根本(Tel 06−6731−0095、Fax 06−6731−0094 E‐mai:nemoto@miyakeseifun.co.jp |
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