2011年 日本穀物科学研究会

第146回例会

2011年5月27日(土)13:00よりエル・おおさか 2階文化プラザ(大阪市中央区北浜東3-14、Tel 06-6942-0001)で開催いたしました。 
テーマ  『消費者ニーズから見た我が国の食習慣の変遷と今後の動向』
 
講演  消費者ニーズから見た高島屋での安全な食品提供への課題と対応
                              木谷一成氏 轄s屋 品質管理グループマネジャー

 高島屋で販売される全ての商品は、品質・安全性・諸表示などで確実な商品であり、対面販売のセールスポイントを活かし、その特徴と取扱いについては、適切な商品説明を行う必要があります。
 そのために、確実な商品販売体制を確立するため、品質管理室を設置し、食料品・繊維製品・日用品などについての管理方法として「品質管理規則」とその細則として「高島屋品質規格(TQS)」や「高島屋品質表示基準」を定め、品質・安全の管理及び検査、諸表示のチェックを行っています。
 また、お客様や販売部からの問い合わせや要望には、検査結果をもとに科学的な根拠のある説明を行いご理解を頂けるように努めています。「品質管理室」は現在全社の仕入れを行う部門に所属し、関東は東京と横浜の2ヶ所、関西は大阪の計3ヶ所で業務にあたっています。
 とはいえ、食品の安全性につきましては、平成8年のO-157、平成12年の黄色ブドウ球菌などの事案は大阪地区を中心に発生し、お客様の小売店、百貨店高島屋への安全性、適正な表示への関心が高まり、要求度合いが年々厳しくなっていることは、日々の顧客からのお申し出(ご苦情)品の増加や内容の複雑化からも判ります。
 これらの課題を克服するためには、「品質」「安全性」「適正表示」を確保した商品についてお取引様に提供いただく必要があります。その為には高島屋が定期的に東京と大阪で開催する「確かな商品の販売に向けた」等の説明会にご出席頂き、当社の品質に関する現状と方針をご理解頂いております。また、各仕入れ担当がお取引様に品質、安全性を基本とした売れ筋商品の販売や売れ商品の開発を目指した商品提供をお願いしております。
 現在これらの内容でお客様に判りやすくご理解いただける販売方法などの紹介や大阪店では、3月3日に全館リニュアルオープンが完成し、より多くのお客様にご満足をお持ち帰りいただける店舗展開を目指しておりますので、食料品のコンセプトや品ぞろえなどにつきまして簡単にご紹介させて頂きたいと考えています。         以上 
木谷 一成 氏
  即席めんの歴史と変遷、今後の展望
                            山屋 多津男 氏  日清食品ホールディングス(株) 食品総合研究所  
 麺の歴史は古く、その起源は中国北部であろうと言われている。石毛直道氏によれば西アジア原産の小麦がシルクロードを経由して、小麦の製粉道具である回転式の石臼とともに、中国の華北平野に伝わって来たのが紀元前3世紀頃の事である。その後アジア各地に伝播し、8世紀には日本でも麺の一種が食べられていた。
 産業革命後、製麺装置も機械化が進んでいく。日本でも1880年代に製麺機械が考案され、日本の製麺機がアジア各国に採用されるようになり、機械化による大生産技術によって麺食が一層普及することとなった。そして20世紀後半になって、日本で即席めんの発明がなされた。このことにより、麺食の伝統がなかった世界各国で麺が食べられ始めた。長い道筋と時間をかけて日本に伝わった麺という食品は簡便性という大きな力を得て国民食へと発展し、日本から世界は、そして宇宙まで運ばれる食品になった。
 誕生と混沌
 1958年(S33年)、故 安藤百福氏により発明された世界初の即席めん、「チキンラーメン」が発売された。これは製麺、蒸熱処理、味付け、油熱乾燥という即席めんの基本行程を工業的に確立し、量産を可能にしたもので、魔法のラーメンと呼ばれて爆発的な売れ行きを見せた。次いで1962年スープ別添方式即席めんが発売され、麺やスープに広がりがもたらされ需要拡大に拍車をかけた。一方で異業種も含めて各社参入により粗悪品の横行、品質の低下などの問題が発生した。こうした状況の中から日本即席食品工業協会の設立、日本農林規格(JAS)の制定がなされた。
 カップ麺の登場 品質の進化及び多様化
 1945年ころにはGDPも西ドイツを超え食生活の水準が量から質への転換期を迎え、業界に沈滞ムードが漂いはじめた。こうした環境の中で1971年(昭和46年)9月、日清食品からカップヌードルが発売された。飽和状態にあった市場に刺激を与え、のちに袋めんと並びやがて凌駕して、カップめんと袋めんの2大ジャンルを形成し、発展した。後には生タイプ麺の登場、アルファー麺ブームの開花と、各社激しい競争の中で刺激的な製品が開発され市場を牽引して現在にいたる。
 グローバル化と今後の方向
 即席めんはアジアを中心として全世界に瞬く間に広がり、地域に根ざした味や食形態をとりこみメジャーな食品に成長し続けている(2009年で912億食;世界ラーメン協会調べ)。即席めんCODEXも制定され、世界基準の品質維持の布石が打たれた。更に多様な付加価値の付与と世界の人々の要求に応える姿勢がこれからの成長には欠かせない。      以上
 山屋 多津男 氏
 
   食品小売業における業態の変遷による売り場の変化
       〜日本と海外の比較から〜
                    清水 正博 氏   株式会社 イズミヤ総研

 日本の小売業は、戦後、諸外国の合理的な経営システムから学び進化してきた。それは小売業者側から仕掛けた部分と、消費者ニーズの変遷に対応してきた部分の両面がある。
 いずれにせよ、小売業の経営は基本的には、「ある市場を目標として、@店舗の立地、A品揃え、B店舗規模、C価格、D販売方法(対面販売、セルフサービスなど)、E付帯サービス(配達の有無、駐車場)、F店舗施設などを決定する」ことにある。その結果として決まるのが小売業の業態である。
 それがどんな変化を遂げて、現状はどのような業態が優勢なのか、栄枯盛衰を見ていくことにより、今後の展望が予測できる。欧米の事例と我が国の業態の進化の過程を検証したい。
 昨今の日本企業を取り巻く環境を俯瞰すると、グローバルな関係を抜きにして語れなくなっている。円高、デフレ経済、日本企業の海外移転、日本ブランドの海外での人気、外国人観光客の増加、食糧自給率問題、輸入食品の残留農薬、中国等の労働コストの上昇など、企業規模や業種に関係なく、何らかの影響を受けていると断言できる。海外との関係の中でもアジア、とりわけGDPで日本を超えた中国の影響を受ける傾向が強まっている。
 日本企業のアジア・中国への進出の増加や、インターネットにより情報の格差がなくなるなど、消費者マインドの垣根が次第に低くなってきている。日本の中でのアジア化が一層大きくなってきている。
 一方では、この度の大災における復興過程では、日本の持つ固有の伝統や文化が見直される可能性が大いに予測される。これらをミックスして今後の売り場は進化して行くことになろう。小売業の過去、現在を見据えて、今後の日本の小売業が進むべき方向について考えたい。
清水 正博 氏
懇親会
連絡先 三宅製粉梶@(〒544‐0034 大阪市生野区桃谷3−2−5)
日本穀物科学研究会事務局 根本(Tel 06−6731−0095、Fax 06−6731−0094
E‐mai:nemoto@miyakeseifun.co.jp   
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