2010年 日本穀物科学研究会

第142回例会

2010年5月21日(金)13:15よりエル・おおさか(大阪市中央区北浜東3-14)にて第140回例会を開催いたしました。 
テーマ  シンポジウム 『製パン性改良のための技術の取り組みの現状と今後の動向』
講演 製パン向けフィリング材開発の現状と生産技術
                                             弓削 秀人(株式会社 田中食品興業所 研究開発部)

○パン用フィリングとは何か
 あんぱん・クリームパン・ジャムパン・・・と,日本には世界でも例を見ないほど,多様な菓子パンが存在している。「菓子パン」という名前がさすように,お菓子のようでもあり,時には食事にもなるという便利な食文化ともいえる。
 その多様性を支えているのが,当社を含む各社が製造している「パン用フィリング」と言われる,脇役のクリーム類である。脇役とはいえ,味付けについては主体的な役割を担っているにも関わらず,殆どの場合,作っているのは製パンメーカー自身でなく,フィリング専門メーカーであるというのも,業界を知らない方には良く驚かされることでもある。
 専門メーカーがフィリングを作ると言うことで,風味や状態が多種多様に進化し,様々な製品が生まれ,菓子パンの世界を広げてきた。今回はパン業界の縁の下であるフィリングの多様さと生産技術を紹介していきたい。

@多彩な種類
 我社の商品群を例にとっても,@フラワーペースト(いわゆる「クリームパン」のクリーム) Aフラワーシート(クリームを板状に成形したもの) B油脂加工食品(風味をつけたマーガリン) C小豆や芋,栗,かぼちゃの餡 Dジャムなどのフルーツフィリングやシロップ Eカレーパンの中身などの調理系フィリング,・・・・といった,様々なバリエーションを支えるフィリング類を開発・製造している。
 また我社には,他社に例を見ない開発体制として,東京・大阪にパン・菓子の技術者を擁し,この技術者達がフィリングを使用した新しいパンの創造や,逆にトレンドから見て売れるパンに求められるフィリングの要求を明らかにし,企画部門や開発部門と一体になって開発を進めている。こうして新しく提案されるパンが出来上がっていく風景なども紹介したい。

A生産及び食品安全の技術
 副資材とはいえ,直接的に消費者の口に入る商品を製造しており,「菓子パン」というフードチェーンの一端を担う立場である。
そのため微生物コントロールを行う殺菌・静菌技術,プロセスラインの食品残渣を完全に除去しアレルギーコンタミを防ぐ洗浄技術,金属はもちろん骨や原料の夾雑物などの異物を防御する技術など,食品安全を確保する設備や技術を紹介する。

弓削 秀人 氏
神戸屋のパンづくりと昔ながらの製パンへのこだわり
   − パン食文化と 「Fresh & Pure」を目指した取り組み −
                                             河上洋一
(株)神戸屋

科学や製パン技術の発達していなかった昔は,大規模な生産設備による大量生産はありませんでした。もちろん,イーストフードも乳化剤もありませんでした。当時は,美味しいパンが手作業で作られ,毎日届けられていました。私達が目指しているパンの原点がここにあります。こうして作られたパンは,かみ締めると”ほのかな甘味”を感じます。
 今や毎日の生活は科学の進歩と恩恵なくして成立しなくなっています。しかし,それに頼るばかりでなく,もう一度自然を見つめ直す。そして,昔ながらの作り方や美味しさを追求していく・・・・・そんなこだわりを大切にしていきます。

・パン作りの歴史とパン食文化    ・・・・・・ (参考)
        ・小麦のひとつぶ
        ・歴史・文化・宗教・環境
・日本のパンの歴史          ・・・・・・ (参考
        ・ポルトガルより伝来
        ・あんぱん
・神戸屋の歴史
        ・明日の食文化を拓く
        ・Fresh & Pure
・昔ながらの製パンへのこだわり
        ・昔ながらの作り方
        ・イースト・乳化剤無添加への取り組み
        ・その他

 私たちのこだわり・・・・・・これは,業界全体の流れからすれば,小さなこだわりかもしれません。しかし,私たちにとっては大きなこだわりであります。今後も{Fresh & Pure」,「イーストフード・乳化剤無添加」への取り組みと,物作りだけではない企業文化のもと”パン本来の美味しさ”を追求し,「パン食の発展」について関わっていればと思っています。
                                                       以上

河上 洋一 氏
最近のパンにおけるパン酵母の活用方法
                                          佐々木祐一(オリエンタル酵母梶@食品開発センター)
 古代メソポタミアで生まれ,ヨーロッパに普及したパンは,16世紀になって日本にもたらされました。パンを膨らませるために必要な「種」は,19世紀頃までには欧米と同様に日本でも自家製パン種が使われていました。その後20世紀になると欧米で開発された圧搾パン酵母が輸入されるようになり,パン種を利用したパン作りの時代が終わりました。そして昭和初期に待望のパン酵母国産化が実現し,これに伴い製パン産業が飛躍的に成長しました。特に第二次世界大戦後は,諸般の事情からパン食が急速に普及したこともあって,パン酵母の使用量も現在では年間約4万トンに達しました。国産化の実現を契機に,国内ではパン酵母の用途開発も盛んになり,今日パン酵母は,製菓製パン用のみならず,各種食品を始め医薬やバイオテクノロジーなど,様々な分野で利用されています。
 製パンにおけるパン酵母の主な役割は,パン生地を発酵させる中で生成されるアルコール類や炭酸ガスであり,パンを膨らませ,またパン特有のふくよかな香りと風味を与える役割プラスアルファの機能を持たせたパン酵母が市場に多く見られています。
 本講演では,パン製造におけるパン酵母の基本的なニーズに対応したパン酵母の開発動向などについて,具体的に紹介する。                                                            以上
 佐々木 祐一 氏
総合討論
懇親会
連絡先 三宅製粉梶@(〒544‐0034 大阪市生野区桃谷3−2−5)
日本穀物科学研究会事務局 林 孝治(Tel 06−6731−0095、Fax 06−6731−0094
E‐mai:k-kondoh@key.ocn.ne.jp)   
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