2008年 日本穀物科学研究会

第136回例会

2008年12月6日(土)13:00より高津ガーデン(大阪市天王寺区東高津町7-11)にて第136回例会を開催いたしました。 
テーマ  『穀物需給の現状と各種製造業の取り組み,およびわが国の進むべき道』

講演   大麦利用の現状
                                林 正幸氏 (鳥越製粉株式会社 常任監査役)

  わが国での大麦の消費量は年間約232万トンでありますが。このうち食用としての消費量は約半分の107万トンで、残りの約125万トンは飼料として消費されています。食用としては、ビール用が70万トン、焼酎用が22万トンで残りの15万トンが主食(押麦)、みそ、麦茶等に使用されています。
  一方、国内麦に対する需要は22万トンで、安全の観点などからその需要はますます増加していて、国は生産努力目標を35万トンとしていますが、国内での生産量は僅かに17万トン程度であり、その殆どをカナダ、オーストラリアからの輸入に頼っているのが現状です。主な輸出国であるオーストラリアでは、一昨年、昨年と初めての2年続きの記録的な旱魃により、その収穫量は半減し世界の在庫が逼迫しました。これに、中国、インドの需要の拡大、バイオ燃料への振り向け、投機的資金の動き等が重なって、価格は高騰し、最近になってようやく落ち着き始めましたが、あいかわらず高止まりの状態が続いています。
  製造工程においては、小麦と大麦では全く異なります。小麦は小麦粉として粉状で使用されますので、極力皮(フスマ)が混入しないように、麦を大きく開いて内側から粉を取っていくのに対して、大麦は粒状で使用されますので、外側から少しずつ皮を磨いて取っていきます。これまでに小麦粉の製粉についての話は何度もありましたので、今日は、このような原料事情とともに、精麦工場のご紹介をし、合わせてライ麦についても若干触れさせていただきます。

林 正幸氏
 
  穀物報道でMediaが好んで使う言葉と小麦を取り巻く現実
                                           宇都宮 渡 (アメリカ小麦連合会駐日代表 )    

 世界的な金融恐慌の予兆とその影響もあり、既に短期的には高騰を演じた市況も、終息感が出てきております。上がったものは下がる、の単純な例えの通りとなって来ております。今此処で、冷静な立場から小麦に関する事実を検証してみたいと思います。

 1. Brics -麦の需要を左右するのは、このところアラブ、モスレム、アフリカでした。世界
3大製粉工場も赤道を取り巻く処に位置しています。

 2. Chicago-が鳥瞰的には大豆、トウモロコシと共に上場していることもあり、規模も大
きく注目を浴びますが、現実には現物絡みのヘッジで利用されるのは、Kansas、Minneapolisです。日本向けの大半もこの2市場に絡んでいます。

 3. 買い負けとは?
  − 単にタイミングの問題、Traderの力量の問題、システムの問題等ではありませ
んか。結果がすべてであります。
  − 手法、技術の問題も確かにあります。
  − 麦に関しては、北米太平洋岸では日系シッパーの独壇場ともいえます。

 4. 太宗貨物ではありますが、日本向け小麦の本船のサイズは世界平均以下であり、東南アジア等に比べて小型です。その今後については。
 5. Gmo -の大豆、トウモロコシに押されコスト面から麦の播種面積は押されています。その現実について。

 本日のKey words:
 A: ADM, Acreage, Army Corps of Engineers, Arbitrage, Arbitration
 B: Bunge, BNSF, BRICs, Black Sea, (Soya)Bean, Bio Fuel, Bushel, Bulk, Barge, Bifffex, Basis, Broker
 C: Columbia Grain, Cargill, CWB, CENEX -Harvest States, CBOT-Chicago Board of Trade, CCC, Corn, car, Carrying charges,
   Credit, Credit Guarantee & Credit Crunch, CAD, Cash, Clean,       Loan

  宇都宮 渡氏 

パン用小麦を中心とした国産小麦生産の現状と各種用途

                              山内宏昭 (北海道農業研究センター パン用小麦研究チーム長
  現状の我が国の小麦の需要量は約600万トン、自給率は約14%である。日本めん用の中力小麦の自給率は比較的高いが、厳密に見ればパン用小麦(強力小麦)の自給率は需要量約160万トンの1%未満と非常に低く、薄力小麦については、需要量は菓子用だけで約80万トンと多いが、国内に薄力小麦品種がないため、自給率は0%ということになる。しかし、実際には製粉メーカー等では、安定的に国内で生産されている中力小麦を製粉法の工夫、ブレンド等の技術により、かなりの量の強力小麦や薄力小麦用途に上手に利用している。
  しかしながら、日本めん用の中力小麦を他の用途に利用することには、その遺伝的特性から考えて自ずと限界があり、最近、実需者の要望に対応するかたちで、農研機構や府県の農業試験場を中心にパン用小麦(強力小麦)品種が続々と育成され、現在も品種開発が継続されている。代表的な育成品種としては、春よ恋、キタノカオリ、ニシノカオリ、ミナミノカオリ等を上げることができる。また、薄力小麦品種についても現在積極的に品種開発が行われており、近い将来には国内薄力小麦品種の育成も期待できる状況である。
  本講演では、このような現状の国産小麦の生産の状況の概要を説明すると共に、国産パン用小麦を中心にこれまでに育成された代表的品種、今後普及が期待できる有望品種・系統の特性と各種用途開発の現状について紹介する。また、主に北海道農業研究センターで育成・研究しており今後品種化が期待できる各種特性の小麦、国産小麦の需要拡大に資する事が期待できる国産小麦用イースト開発についても若干触れるつもりである。
山内 宏昭氏


 懇親会
連絡先 三宅製粉梶@(〒544‐0034 大阪市生野区桃谷3−2−5)
日本穀物科学研究会事務局 林 孝治(Tel 06−6731−0095、Fax 06−6731−0094
E‐mai:k-kondoh@key.ocn.ne.jp)   
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