2005年 日本穀物科学研究会

第123例会

2005年9月30日(金)15:00より三和澱粉工業株式会社 本社・工場にて第123回例会工場見学及び講演会を開催いたしました。 
テーマ   工場見学及び講演会
 三和澱粉工業株式会社 本社工場
講演
生理機能性素材への澱粉業界からの取り組み
                         三和澱粉工業株式会社 研究開発部  柴沼 清
 高齢化社会といわれて久しいが、その対策は少しずつ変化してきている.例えば医療は,治療から予防へと変化し最近は病気との共存という考え方が広がってきており、「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」の重要性が増すと考えられる.
 生活習慣病の予防目的で1991年に創設された「特定保健用食品」は、本年はその対象を広げる(いわゆる「条件つきトクホ」)制度改正が行われた.現在、トクホ認可数は534品目(平成17年8月1日)だが、今後益々の増加が予想される。認可数増加に伴って、その質も重要となる.日々摂取することを前提とした健康志向食品だからこそ、QOL、つまり、二次機能である「味」(美味しいということ)に注目すべきと考える.
 生活習慣病として大きな割合を占める糖尿病(予備群を含めると1620万人)の医療や栄養指導の現場でも、「甘味の忌避」から「低カロリー甘味料利用などによる甘味との共存」へと少しずつ変わってきているように思われる.当社が昨年販売を開始したL-アラビノース(製品名:アラビノ)も、こうした社会ニーズに則って開発したものである.L-アラビノースは、砂糖分解酵素(スクラーゼ)の作用を阻害(不拮抗阻害)して砂糖の吸収を抑え、血糖値の急激な上昇を抑制する作用がある.L-アラビノースは伝統的な食品(パン、コーヒー、お茶類、麦味噌など)に幅広く含まれ、食経験という点では馴染みある糖質といえる。 また、小腸で膜吸収されにくく(高い安全性)、腸内細菌(ビフィズス菌)の資化性も高く、味の面ではそれ自体キレのよいすっきりした甘味であり、砂糖に対し3〜5%のごく少量添加で有意に効果を示すことから、砂糖の美味しさを損なわない.
 トクホの先陣を切ったオリゴ糖類は社会的に機能性素材として定着した.現在はオリゴ糖類間の違いとして、新機能の付加(Ca吸収促進や免疫賦活など)に対する試みが多いが、味や風味へのアプローチ(トレハロースのしっとり感やニゲロオリゴ糖のマスキング効果など)も同時に重要になると考えられる.食物繊維も、オリゴ糖と同様、社会的に定着している.今後やはり、生理機能と味のコントラストが重要になるのではないか。当社の食物繊維素材への取り組みは古く、レジスタントスターチ(アミロジェルHB-450)を販売している。HB-450は湿熱処理技術によってハイアミロースコーンスターチの難消化性を3倍に高めたもので、その生理機能も整腸作用、血糖上昇抑制、脂肪代謝の改善など多岐にわたる.食感としてはサク味付与効果があり、クッキーやパンの機能付与、食感改良素材として利用可能である.多量添加でやや粉っぽい食感が出てくるが、保湿性や口溶けを付与するα化澱粉を添加すれば、しっとりして口溶けも良い食品へと進化する.
柴沼 清 氏


 懇親会
連絡先 三宅製粉梶@(〒544‐0034 大阪市生野区桃谷3−2−5)
関西穀物科学研究会事務局 林 孝治(Tel 06−6731−0095、Fax 06−6731−0094
E‐mai:miyake@mbox.inet-osaka.or.jp)   
TOPに戻る
HOMEに戻る