2004年 日本穀物科学研究会

第117回例会

2004年1月23日(金)13:30より大阪府庁新館別館多目的ホールにて第117回例会並びに総会を開催いたしました。 多くの方にご参加いただきました。
テーマ  食品の殺菌、衛生管理・法規の現状と今後の動向
講演 食品と消毒剤の使用法について
                                    丸石製薬梶@生産本部長 白井國雄氏
  現在、弊社は医療用医薬品を製造する会社として医療機関向けに殺菌消毒剤(以下 消毒剤)を販売しており、その立場から食品分野の関係者の方々に何らかのご参考になればと考えている。
  食品という広域分野で消毒剤を適正に使用するためには、食品学、化学・薬学、微生物学、環境工学などの広範な知識が本来は必要だろうと考える。  通常は、@消毒剤の化学特性と殺菌効果 A微生物の毒性や生育形態 B消毒する材料、構造物、汚染状況などの三つの基本的な項目でしばしば要約されることが多い。    特にE.H.Spaulding(1977)による殺菌性能の評価は、微生物を消毒剤に対する抵抗性によって段階的に区分している。 この評価法は、消毒剤を微生物に対する殺菌スペクトルにより、高度、中等度及び低度の三段階に評価するもので、殺菌性能の一般的な傾向をよく示していると思われ理解しやすい。
  消毒剤は、消毒手順や諸条件の要因によって殺菌効果に大きな差を生じることもあり最も注意をしなければならない。消毒効果があると思って使用したが、時としてその効果が全く期待できなかったというような危険性を含む作業である。
  これは製品汚染、製造環境汚染、作業者等への二次感染等を引き起こすことになる。   このような重大なミスを防止するためには、消毒剤の適格な選択、適正な使用手順及び定期的な殺菌効果のチェックが必要である。
  これらの見地から、消毒に関する作業者全員への教育訓練における学習の徹底、特に消毒作業に携わる実務者には消毒分野の高度な知識や実技的な消毒手順や注意事項などの専門知識を取得させることが最も重要と考える。
  今回は適正に消毒剤を使用するポイントについてお話しをする。
          1.殺菌効力と薬剤選択
          2.殺菌効果に関与する主な要因
          3.殺菌効果に影響を及ぼす種々の要因
          4.調製と滅菌手段
          5.薬剤耐性菌
          6.使い方における注意点など         以上
白石國雄氏
 
HACCPと食品衛生管理
                                     近畿大学農学部 教授 米虫節夫

  日本版HACCPシステムである総合衛生管理製造過程を取得していた企業による大規模食中毒事件やその後の多くの食品回収事件などを契機に、日本ではHACCPシステムにたいする信頼が大きく低下した。しかしながら、HACCPシステムは食品安全を保証するシステムとして、いまでも国際的に最も確かなシステムとして評価されている。
  HACCPシステムは米国の国家的威信をかけた人類初の月面探査というアポロ計画の中で開発された。その為、トップ主導型、目的達成型、プロセス重視、経費無視(金に糸目は付けない)などの幾つかの特徴を、その誕生史の中に包含していた。その一部分が日本では喧伝され、本来ソフトのシステムであったHACCPシステムが、ハード重視のシステムと誤解されたり、トップ主導型が無視され現場だけのHACCPシステムになってしまい、その信頼性を低下させてしまった。HACCPシステムの基本は、「7原則12手順」と云われるソフトシステムとしてまとめられている。そのシステムを潤滑に運用するためには、一般的衛生管理プログラムが必要であり、「衛生標準作業手順書」などがその過程で作られる。衛生状態を適切に保てるようの設計されたハードシステムが存在すればこの「衛生標準作業手順書」は簡単なものになるし、ハードシステムが良くなければその欠点を「衛生標準作業手順書」で補わねばならない。日本ではこの点が誤解され、HACCPシステムをハード中心のシステム対応としてしまう誤りを犯した。
  ISO9001は企業におけるマネジメントシステムとして国際的に高く評価され、世界中の多くの企業でトップ主導型システムとして活用されている。一方、HACCPシステムは、食の安全性のみを保証するシステムであり、企業活動全般を保証するISO9001の中に組み込まれて初めてその効果を発揮する(しかし、日本ではその考え方を「誤ったもの」として長い間排除してきた)。この考えのもと、ISO/TC34では、ISO9001とHACCPシステム」とを統合したISO規格の制定を目指した活動を開始した。その成果の一つがISO15161「ISO9001:2000の食品・飲料産業への適用に関する指針」であり、2001.11に制定され、発行された。それに引き続きISO22000「食品安全性マネジメントシステム――要求事項」が検討され、制定される方向に進んでいる。
  ISO/CD22000においては、従来のHACCPシステムが食品製造・加工工場のみを対象としていたのと異なり、クリントン元米国大統領が云った“From Farm To Table”の全ての段階に関連する企業・組織である、食品原材料生産者、一次加工業者、二次加工業者、輸送・保管業者、流通業者、小売店などが対象になるほか、飼料製造業者、設備・機械製造業者、洗剤製造業者、包装材料製造業者、サービス業者などもその対象に含まれることになっている。食品関連業者の全てがISO22000の認証を受けることが可能となるわけである。
  食糧自給率がエネルギーベースで40%しかない我が国においては、諸外国の食品安全に関係する制度を無視することは出来ない。ある国の基準に合格しても、日本の基準に合わなければその食品は輸入することが出来ない。しかし、ISO22000が制定され発行されれば、各国はこの規格に従って食の安全性についての評価を行えば、それが国際基準に合致することになり、判断基準が統一され大変便利になることが予想される。この理由において、今ISO22000は世界中で熱い注目を受けながら検討されている。

米虫節夫氏 
食品の殺菌と殺虫の現状と今後の動向について
                                    三宅製粉梶@代表取締役 三宅一嘉

  大自然の恵みと、多くの人々の愛情に依り生産された食品の保蔵は生産物を安全に確保して食品の儒給を調整し、供給及び価格の安定に貢献するものであります。その方法は栄養分の減少を防ぎ、衛生的にも安全な食品をできるだけ長期保全することはもちろんでありますが、さらにその食味を保持して嗜好性も満足させるのが理想的な方法であります。
  食品の腐敗とは、食品が微生物の作用によって、形、色沢、硬さ、味など本来の性質を失って、悪臭を放ち、あるいは毒物を生成して不可食となる現象であります。今回は、油脂酸化や褐変現象などの変質、動植物病原、食中毒、あるいはカビ毒などによる食品の悪変については省略し、微生物による腐敗と、それを防止する為の殺菌、静菌、除菌について考察し、食品の混入異物としての侵入昆虫の中でも貯蔵食品の害虫とその殺虫方法の現状と今後の動向について述べさせていただきます。

[殺 菌]
    1.食品の変敗による生産物
    2.食品腐敗菌の種類
    3.食品保蔵法と殺菌技術
    4.世界各国における照射食品の法的許可の現状
    5.植物由来の殺菌、静菌作用の利用
[殺 虫]
    1.害虫の分類
    2.異物混入としての昆虫の実態
    3.代表的昆虫の生態
    4.貯蔵食品害虫による被害
    5.貯蔵食品害虫の特性
    6.主要な貯蔵食品害虫の生態
    7.コナダニの種類
    8.製造・加工工程での害虫の殺滅及び除去
    9.流通過程における混入防止対策
   10.薬品燻蒸(ガス燻蒸)から熱燻蒸へ
   臭化メチルの使用が2005年全廃(モントリオール議定書)
                                                                        以上

三宅一嘉氏
総会
 懇親会
連絡先 三宅製粉梶@(〒544‐0034 大阪市生野区桃谷3−2−5)
関西穀物科学研究会事務局 林 孝治(Tel 06−6731−0095、Fax 06−6731−0094
E‐mai:miyake@mbox.inet-osaka.or.jp)   
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