2002年 日本穀物科学研究会
第110回例会
2002年4月26日(金) 13時00分より(株)毎日新聞社ビル 研修ルーム501号室(大阪市北区梅田3−4−5)にて開催されました。 今回は今までにないテーマだったので始めての方も多くご参加いただきました。 |
内容 | テーマ: 蒸しまんじゅうから酒種あんぱんへ これからの和菓子そしてパン |
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講演 | 1.あんの科学 光永俊郎氏(近畿大学農学部教授、日本穀物科学研究会会長) |
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あんはデンプン含量の多い豆類やいも類を水中で煮熟して生成させた細胞デンプンを利用した食品で、日本に古くから伝わる和菓子素材である。 製あん原料としては主に雑豆である。雑豆というのは大豆、落花生を除いた、小豆、いんげん豆、エンドウ、ササゲ、ソラ豆などの豆類の総称である。 あんには次のように多種多様の名称がある (1) 加工の程度---------------生あん、練りあん、乾燥あん (2) 原料豆の種類------------赤あん、小豆あん、白あん (3) 製あん方法---------------生こしあん、潰しあん、煮崩しあん (4) 練りあんの配合糖量---並割りあん、中割りあん、小倉あん、上割りあん (5) 仕向け先、用途---------餡パン用あん、最中あん、冷菓用あん、大福あん、 黄味あん、柚子あん、挽茶あん あんの製造工程はあんの種類、生産規模の大小などによって多少異なるが、一般には原料豆の精選、水洗、浸漬、煮熟、磨砕、篩別、水晒、脱水により生あんがつくられる。あんの製造工程で最も重要なのは浸漬と煮熟である。浸漬の目的は豆の内部まで十分に水を浸透させ、煮熟の際に熱の浸透をよくし、煮熟時間を短縮すると同時に均等に煮熟するために行う工程である。煮熟はあん粒子を形成させるための最も重要な工程である。あん原料の雑豆の組織は細胞膜で仕切られた細胞がぎっしりつまっている。その細胞中には数個ないし十数個のデンプン粒子とタンパク質、その他内容物が含まれているが、浸漬によりデンプン粒子は吸水し、タンパク質は溶解する。次の煮熟により細胞内に存在するデンプンは糊化開始前に溶解していたタンパク質が熱凝固してデンプン粒子を取り囲み、皮膜を形成する。この取り囲まれた状態でデンプン粒子は熱を受けるので、粒子の崩壊なしに糊化して、あん粒子が形成される。このあん粒子を分離して生あんがつくられる。さらに練りあん、乾燥あんへと加工され、食品素材と利用される。 このあんについて原料豆類の成分特性、あんの製造工程と製造原理、あんの成分組成、構造特性、物理的特性、甘味料とその保存性、凍結変性などについて解説します。 |
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光永俊郎氏 氏 | ||||
2. 酒饅頭について 金澤賢吾氏(辻製菓専門学校、和菓子助教授) |
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「酒饅頭について」 金澤 賢吾 * 饅頭の歴史、由来について ・ 饅頭の起源は中国 ・ 饅頭の発案者 ・ 日本への伝来(虎屋系と塩瀬系の2系統の饅頭) ・ 林浄因と塩瀬饅頭 * 酒種をつくるには(培養) ・ 糀について ・ 酵母の誕生 ・ 元酒ができるまで ・ 種のこねつけ方、蒸仕上げ <別紙参照> |
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金澤賢吾氏 | ||||
酒饅頭 元 種 16℃ 17日間 配合 白米 1.5kg 糀 1.1kg 水 1.8リットル 1日目 @ 粳米をよく洗い、水が透き通るまで完全に洗い流し、ザルに上げ水気を切る。 A セイロに網布巾を敷き、白米を入れ40〜50分蒸す。 B 蒸し上がれば、大きめの容器に薄く広げ、風通しの良い所に7〜8時間 放置し乾燥させる。 C 乾燥した白米に糀を混ぜ合わせ、瓶に入れ水を加え表面を軽く押え ならす。 D 三枚折りにした白布で蓋をし、16℃の場所に置く。 ※24時間ごとにかき混ぜる。 3日目 気泡が出はじめる。 糀が白米の澱粉を糖に変え甘みが出てくる。又、少し液状化が見られる。 5日目 表面の中央が膨らみ、巣がたった状態になる。 甘みが強く、少し酸味が見られる。 10日目 酒の香りも強くなり、甘酸っぱい味になる。液状化が進む。 15日目 液体が多くなり、酸味と渋味を感じる。 17日目 酒の香り、酸味、渋味、苦みが強くなり、約70%が液体になる。 この状態で元種の出来上がりとなる。 |
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仕上げ酒 26℃ 24時間 配合 糯米 1.5kg 水 2リットル 糀 200g 元種 250g @ 糯米、水で 米粒がつぶれない程度のお粥を作りよく冷ます。 A お粥を瓶に入れ、元種と糀を加え 良くかき混ぜる。三枚折りにした白布で瓶の口に蓋をし26℃の場所で24時間保温する。 B 10〜12時間位でぷっぷっと気泡が出だす。水分は多くなっている。 C 24時間でさらに水分が多くなり、大きな気泡が盛んに出始める。 酒の香り、渋味、苦みが強くなる。 この状態で仕上げ酒の出来上がりとなる。 酒饅頭生地の作り方 配合 仕上げ酒 230g 上白糖 170g 白餡 30g 薄力粉 310g 準強力粉 140g @ ボールに仕上げ酒、上白糖、白餡を加え、良く混ぜる。 A @に粉を加え手でこねつける。 B ひとまとめになれば、乾燥しないようにして、26℃の場所で5〜6時間置く。(約1.5倍の大きさになる。) C 手粉の中に生地を落とし、軽くまとめ 生地18g 餡20gで包み約8分間 蒸す。 |
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3.酒種あんぱん 佐溝宗助氏(玉出木村屋 代表取締役) |
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玉出木村家の歴史は、初代 大倉豊が明治39年
に大阪鶴橋にて創業。酒種、ホップス種(ジャガイモ種)等でパン、菓子の製造を始める。その後、大阪市平野区に移転し、「大丸木村家」を設立。 その後、二代目 佐溝宗助が、西成区玉出において(有)玉出木村家を 昭和29年6月19日に設立、現在に至る。 最近、自家製発酵種を利用してのパン作りが話題となっているが、日本におけるパン用発酵種といえば酒種であろう。酒や味曾用の麹を,米を媒体として培養するものである。 それらの培養過程において、酵母との共存がなされ、発酵中にCO2 productを得ることが出来る。特記すべきは、麹の中でプロティアーゼは小麦生地のグルテンを分解するが、経験的に酵素活性の低い種族の選定、並びに二次加工の配合、製法といったものを 微妙なバランスのもとに何百年も前に確立されたことであろう。 以上のことより、酒種、ホップス種、サワー種、レーズン種、リンゴ種、ヨーグルト種、地ビール種、etc の自然種を取り入れ、日本人の口にあう天然酵母のおいしいパンを作るべく、毎年、フランス、イタリア、イギリス他、各地を訪れて美味探求し、努力しています。 今後、サンフランシスコサワー種、フランス、エジプトなど世界各地の天然酵母を取り入れ、日本において世界中で焼かれているパンを、日本の人々に紹介できたらという"夢" を実現すべく、頑張っています。 |
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佐溝和一朗 氏 | ||||
パネルディス カッション |
これからの和菓子そしてパン(天然酵母の新技術) コーディネ−ター:吉野精一氏(辻製パンカレッジ教授) パネラー: 佐溝和一朗(玉出木村屋 代表取締役) 金澤賢吾(辻製菓専門学校和菓子助教授) |
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豆の種類と餡の性質について及び天然酵母とパン用酵母の違いについて議論が集中した。特に天然酵母の名称に ついては一考を要する提案がされた。 |
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懇親会 団野氏の発声で乾杯 |
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連絡先 | 三宅製粉梶@(〒544‐0034 大阪市生野区桃谷3−2−5) 関西穀物科学研究会事務局 林 孝治(Tel 06−6731−0095、Fax 06−6731−0094 E‐mai:miyake@mbox.inet-osaka.or.jp) |
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