2001年 日本穀物科学研究会例会 第106回例会 |
2001年5月11日(金) 13時30分より大阪市天王寺区石ヶ辻町19−12 ホテルアウイーナ大阪 3階 「信貴の間で盛会裏に開催されました。 |
内容 | 「パン工場の衛生管理について」 | ||
講演 | 1.江藤 諮 氏 (イカリ消毒株式会社CLT研究所) パン工場における異物混入の考え方 -特に有害生物対策を中心としてー |
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昨年1年間に当社検査センターで受け付けた食品への混入異物の同定検査数は、一昨年の約2.5倍、8043件にのぼった。 特に8月以降は前年同時期の5倍を越えた。 パン・菓子製品への異物混入件数は、弁当総菜(25%)に続く件数(12%)であった。 1. 異物混入防止対策の総合システムの構築 異物混入は、多くの要因が複雑に関係しあって発生しているため、これらの要因を一つひとつ取り除いていく以外に異物混入を減らし撲滅することはできない。また、異物混入は従事者の些細な不注意で発生し、また防ぐこともできる。つまり異物の管理とは人に依存する部分が大きいことが特徴と言えよう。人に着目した管理システム(監視システムではなく)を構築し、個別の防除対策を適切に組み合わせることによって始めて効果を得ることができると考える。総合システムのポイントはイカの3点である。 @ 異物防止対策として管理された製造環境を実現する---清潔であること、施設設備が適切に保全されていること A 異物混入リスクを分析し、異物防止対策活動に反映させる---総合的な分析をし、防除対策を知り化学的な対策を立案 B 異物防止対策としての全てのルールを全従事者が確実に実施できる---ルールが明確であること、確実に実施できるためのしくみを導入すること 2. 有害生物防除 工場は本来、有害生物に対する防御力を程度の差こそあれ有しているものである。しかし工場管理者に防御力に対する意識が薄いと(よく知らないと)、工場が古くなるに伴い伴い、防御力が急速に失われてしまい、結果大量の有害生物の侵入や発生を許してしまう。製パン工場では他産業と比較しサニタリーデザイン(洗浄、清掃のし易さ)上の問題が発生しやすいため、問題が見えにくく、対策の方向性が定まらないケースが多い。 殺虫剤によってこれらを抑え込む事は場合によっては有効である.しかし、殺虫剤自体が衛生上の危害である以上、工場の防御力を維持、強化する事によって、殺虫剤の使用の量を最小限に抑えて効果を確保する防除計画が求められる。全項総合システムと同様、工場の現状を丁寧に分析し、従事者に着目した計画を立案することが必要である。 |
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江藤 諮 氏 | |||
2.井上好文 ((社)日本パン技術研究所 所長代理) パン工場への食品安全衛生指導および監査システムの導入について |
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昨年の夏発生した乳業メーカーによる食中毒事故以来、消費者の食品の安全性(フードセーフティ)に対する意識が顕著に高まっている。その結果、食品メーカーには、消費者意識の変化に対応したフードセーフティを確立することが急務とされている。特に製パン業界においては、異物の混入問題を軽減することが重要な課題とされている。 パンへの異物混入問題を軽減するためには、従業員への衛生教育と工場内の徹底した清掃が重要であるが、工場の周囲の環境、工場の設計および状態、機械類の清掃のし易さ、原材料がどのような状態で入荷されるか等々によって多大な影響を受ける。したがって、異物混入問題を消費者の信頼レベルまで軽減するためには、工場内の全ての従業員が考えられる全ての原因を取り除く努力をすると共に、この分野の経験が深い第3機関による指導(問題点の指摘および改善策の提案)、そして継続的に監査を受けることが極めて有効である。しかし我国にはそのような第3機関が見当たらない。そこで当研究所は、米国で妬く50年間もパンメーカーを含む食品メーカーにフードセーフティの教育、指導、および監査を行なってきている米国パン研究所(AIB)の指導の基に、フードセーフティー部を設立した。そして、このフードセーフティー部によって、AIBのフードセーフティープログラムをまず製パンメーカーに提供すべく準備を進めている。このAIBのフードセーフティープログラムに関して、以下のような項目について解説する。 (1) AIBフードセーフティー部門の歴史 (2) AIBフードセーフティー部門が米国および諸外国でどのように活躍しているか (3) AIBのフードセーフティー指導 ?AIBのフードセーフティー指導 ?マスタークリーニングスケジュールおよび手順書の作成 ?機械の改善 ?従業員教育 (4) AIBフードセーフティー監査 (5) AIBのフードセーフティー監査とISO (6) 当研究所フードセーフティー部の準備状況 |
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井上好文 氏 | |||
3.石井営次 氏 (大阪市立環境科学研究所) 最近の食中毒の傾向と問題点 |
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1. 食中毒事件の現状:集団食中毒と散発性食中毒 1)集団食中毒:これまで食中毒といえば一般にこの集団食中毒のことといわれてきた。これは厚生省(現・厚生労働省)から報告されている食中毒統計にあげられている。しかし、ここ2〜3年前から、患者が一人の食中毒も統計に加えられるようになった。 2)散発性食中毒:これは家庭で発生している食中毒で、一般の病院で検査されたデータから、傾向を見ることができる。サルモネラ、カンピロバクターなどがある。 2. ディフュースアウトブレーク(Diffuse outbreak) 一見して個々に発生している集団食中毒や散発性の食中毒の原因をたどれば特定の食品を原因として発生している集団食中毒のことで、広域性集団食中毒とも表現できる。1998年に発生した、イカ乾燥菓子による全国規模の食中毒などを始め、小さい規模でも発生している。 3. SRSVによる食中毒 冬期を中心に、生カキを原因とすることが約半数以上あり、ウィルス性食中毒の代表である。本年は大発生した。 4. 情報の収集、および伝達体制の変化 インターネットなどを利用した、国外からの食中毒情報の入手が早くなり、今後の対策などとりやすくなってきた。食品の流通や人の往来が国際的になり、食中毒の発生も世界的に共通するようになってきた。 5. 輸入食品による食中毒 輸入食品は我が国では半数以上といわれる。それにつれて、特に生食される食品の衛生管理が重要となりつつある。わが国にはないといわれるような、寄生虫なども注意すべき病原体と考えられる。 6. 発症菌量の少ない食中毒菌 代表的な食中毒菌は、病原大腸菌O157、サルモネラ、カンピロバクターなどがある。 7. 死者を伴う食中毒 かってはボツリヌスが有名であつたが、現在ではサルモネラ、腸炎ビブリオなどがある。ふぐ毒やキノコなどは毎年発生している。 8. 食品衛生法の改正と感染症新法の制定 現在の食品衛生法は食品に関係する微生物による食中毒をすべて取り扱い、情報の一元化をはかっている。 9. 異物混入などによる製品回収 雪印食中毒以降、これまで表面にでてこなかったとみられる異物混入事件がマスコミに多く登場するようになった。公になることにより、食品衛生意識が高まってきたと思われる。 10. 食中毒と食品衛生上の問題点 @食中毒の発症菌量と宿主の免疫力、A生食と食中毒、B食品からの微生物の検出限界、C人からの汚染を避けることができるか、D輸入食品の増加 |
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石井営次氏 | |||
総合討論 | 4.総合討論(質疑応答) 会場からの多くの質問が寄せられ、多くの活発な討論が行なわれた。 パネラー 左より 江藤諮氏、井上好文氏、石井営次氏 総合司会 弘中泰雅(テクノバ株式会社) |
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懇親会 | 17:10 同ホテル3階 「二上の間」 にて | ||
情報交換 生地丸め指導風景 |
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盛況な懇親会。 |
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連絡先 | 三宅製粉梶@(〒544‐0034 大阪市生野区桃谷3−2−5) 関西穀物科学研究会事務局 林 孝治(Tel 06−6731−0095、Fax 06−6731−0094 E‐mai:miyake@mbox.inet-osaka.or.jp) |
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